ノラと呼ばれた男【弐】

時雨を見ると、少しだけ笑って、


「さ、戻んぞー」

くしゃりと乱暴に髪を撫でられた

その際、ふわりと香る柑橘系の匂い






あ…………香水変えたんだ、



「うん、……皆、待ってるしね」



なんて言いながら、時雨の一歩後ろを歩く。また倒れないように。

そうする事で、時雨が歩く度、ふわりと香りがやってくる






この匂い、結構好きだな……と内心呟きながら二人で教室に戻れば、


「あ、姫、時雨おかえりー」


「時雨大丈夫?今からが混むよ、12時過ぎればゆっくり出来るけど休んどく?」


「大丈夫か、時雨」




藍、羽音、迅の順番で口を開き、全員が心配している表情だ。

愛されてるなぁ時雨は

「おう、ちっと人酔い。もう治った」

にかっ、と八重歯を見して笑うなか、一瞬、眉をしかめた迅。

何か言いかけて押し黙る

ほら、そういうとこ時雨もするんだよ



「……無理はするなよ」


「分かってんよ、ありがとな」





既に背を向けて歩き出す迅に、礼を言った時雨はそのまま片手で私の肩を叩いた


ポン、ではなく例えるなら「ベシッ」って叩きかた

「いった~、何急に」


暴力反対!と言いかけた私が言うのを止めたのは、

少しだけ、……ほんの少しだけ、



「お前もありがとな、…………一華」

優しい表情で時雨がこっちを見てたから

気付けば私は息を飲み、互いの視線が絡み合う






………………………………笑った、