ノラと呼ばれた男【弐】

なんか、ちょっとシリアスな雰囲気で、
かなり気まずかった私は、



「あっ、そー言えば制服に着替えたんだね」



「あ?……あー……あの姿で後夜祭はキツいだろ」








思い付いた話題を適当に振った。

イチから私になって、戻った時にはクラス全員が女装姿ではなく制服姿へと戻っていた

あの姿で、一枚、写真取れば良かったな




「つか、アイツ、帰ったのかな」



「アイツって?」



「ん、嗚呼……イチっつー野郎」








あ、忘れてた。

せめて「帰るね」って一言言ってから、‘’私‘’に戻れば良かったな。

急に竹松先生から電話きて、ゴタゴタしてたからなぁ



「あー……まぁ、……外部だからね、帰ったんじゃない?」



「かもなー、連絡先聞いときゃ良かった」









なんて言いながら、ふと、時雨が足を止めたのは体育館裏。

日が当たらず、地面には苔が生えている



「この場所、あんま人来ねぇから知られてねーけど、ここにしかねーんだよ」

そう言って時雨が視線を向けたのは、色褪せた古い自販機。

近づくと、お茶、オレンジジュース、カルピス、コーラ、珈琲、カフェオレ、その他にも、振って呑むゼリージュース等が自販機の中に入っているのが伺えた。


(あ、このジュース……コンビニにない奴だ)




思わず自販機を見ていれば、迷う事なく

カフェオレ、コーラ、フルフルゼリー、ブラック珈琲(boss)、

そして何を考えてか、顎をしゃくる時雨





「んで、お前は?」



「……………へ?」