ノラと呼ばれた男【弐】

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ほら、携帯鳴ってますよ?

そんな声すらも別人が発している様だ








「あ、うん……………………」

曖昧な返事をしながら、私はもう一度、

田中に視線を向ける。



けれど、すでに彼の瞳は前髪で隠れ、表情を隠す。

見間違い………………なわけ、ない、





まるで温度すらなかった……氷みたいな目
















久々にゾッとした、


感情すらない、あの感じ。

昔の………………私と同じ目だ、




「すぐ、………………戻るから、」


この場を離れるのは、かなり気が引けたが……、

辺りを見渡して確信する

大丈夫、……これだけ生徒や客がいる、








少し、席を外すだけ。


(大丈夫、だよね……………………)

















田中の横を通りすぎ、私は後ろ髪を引かれながら……教室を後にした。

さくっ、と電話終わらして教室に戻ろう

と、内心呟きながら向かうは、




田中くんに言われたお手洗いの場所。

勿論、早足で歩きながら、気が急いて、鳴り続ける携帯の通話ボタンを押したのは言うまでもない。



「………………はい、」



『おー……やっと出た』

私とは異なり、緩い声を出す竹松先生
あれから保健室で寝たのか、朝よりか明るい声に、何故か、先程のもやもやした気持ちが浄化されていく。

あ。癒されていく?って言うんだっけ?






「ん、ごめん、場所が悪くて出れなかった……、」



『あー……わり、空気読めなかったわ



―――――――――今、ちょっといいか』