ノラと呼ばれた男【弐】

具の上から再び生地を流し込み、素早くたこ焼きを引っくり返していく。

まるで手品みたいな、

「タコが、この中では一番火が通りにくいねん。せやから最初からじっくり火を通せばええっちゅう話やけど、

なんや、ちょっと喧嘩に似てるなぁ思わん?」




と、そう発した男は悪戯な笑みを浮かべ、

それとは異なり、迅の眉間に皺が寄る。






「そう、怖い顔せんでくれる?

本当の話やん。喧嘩やったら一番大きな存在を潰すんが早い、

だから、逆に言ってしまえば頭か、それらが大事にしてるもんが危険やと思うやろ?









でもな、それは敵さんも同じやで。

敵にも弱点はある、ちゅー話し」





「…………」






「な?やっぱりタコ焼きと喧嘩は似てるやろ?」




そう言って、いつの間にか出来上がったばかりのタコ焼きを2パック渡される

先程の会話はただの世間話だ、とでも言いそうな雰囲気のまま…………、




「まいどっ!買ってくれておおきに~」


迅が渡した小銭を満面の笑みで受け取った。けれど私は動けない、

だって、とてつもなく『その』違和感に気付いたからだ





『1個上の先輩らが出店出してて、そこのたこ焼きが美味い…………らしい』

ここに来る、少し前に迅が言った言葉を思い出す。確かに迅は『1個上の先輩』と言ったのだ……………………、




見るからに上機嫌でタコ焼きを焼く男、

サバを呼んでも『大学生』で、ぎりぎり信じるか疑うかのラインに含まれる、





(こんな人………………学校に居なかった、)

と、内心で呟くと同時に、

それに気付いているのか、いないのは分からない迅の口角が僅かに上がる。







何かちょっと楽しんでいるような、



「御忠告どーも、『先輩』、いや、違うか……OBって言った方がいいっすか」


「えっ…………OB、?」







気の抜けた自分の声と、ほぼ同時に男は嫌そうに顔を顰める。

「なんや最初から気付いてた、ってか」



「…………」



「食えない奴やんなぁ、お前」