ノラと呼ばれた男【弐】

すぐ焼ける、と言ったもののたこ焼き器のプレートにはまだ何も乗っていない。

思わずハチマキを巻いている男の持つボールを見やれば、







割ったばかりなのか、新鮮な卵が視野に入った。


(まさか………………今から作るの!?)

え。だって、普通の学生が作るんだよ?

普通冷凍ものを温めるんじゃ…………、






「んだ坊主、本場もんの作業見るんは初めてか」



「へ?…………本場…………?」


手際よく卵を泡立てながら混ぜる男は、悪戯っ子の様な笑みで笑い、

慣れた手付きのまま、小麦粉、水、だしの素、砂糖、塩、醤油、コーヒーフレッシュをいれ、卵と混ぜ合わせていく。

そして、その後、

タコを約一センチくらいに切り、紅生姜はみじん切り、ネギは小口切りにし、直ぐ様、たこ焼き器を温め、油を敷く。



「わい、生まれは大阪なんやで


つっても、たこ焼き焼く修行とかしてないで?はっはっはっ、ただの趣味やわ」


豪快に笑い、八重歯が光る。
その間も、彼の手が止まることは無く、

温まったたこ焼き器に生地を少量、流し入れタコ、天カス、ネギ、紅生姜の順に投入し、




「さて、と、坊主」



「え、……あ、はい、」



「何故タコを最初に入れたか分かるか」












不意打ち過ぎる質問に、自然と首を傾げ、


無意識にも迅を見やった。

「……………………火が通りにくいから、か」




「正解。なんや、そっちの兄ちゃんはたこ焼き作った経験あるんか?」