ノラと呼ばれた男【弐】

軽く頭痛を感じながら、額に手を当てて時雨を見やれば。

自分が飲み掛けていた珈琲を『うまそう』などと言いながら、ちゅっかり飲んでいやがった…………が、

その数秒後、それを盛大に噴きやがる






「うわ!?ちょっ、汚なっ!?」



「ばっ、おまっ、なっ!」



「いや、の前に落ちついてっ」



わなわなと、コップを持つ手が震える時雨に思わず突っ込みながら、

机の上にあったお手拭きタオルを手渡す



見て。机、珈琲で汚れたんですけど。
しかも、高そうな“あの”珈琲を噴きやがって。勿体無い←ぇ

あ。大丈夫。『嘘、間接キス!?』なんて突っ込みはしない。

大体、飲み回しなんて女子同士でだってするし、それがたまたま時雨なだけで、

ドキドキするような可愛い心臓は持ち合わせていないのだ




「つか、……おまっ、……今日知り合った奴に話す内容か?」



「まぁ、……確かに」



「てか、なんだよ、この、いかにも恋ばな的な会話

俺の人生で、んなもん語った事、1度もねぇぞ!?」





と、何故かどやりながら言い放つ時雨。

うん、まぁ。野郎だけで、と言うか……イツメンでそんな話してるとこなんて、ぶっちゃけ想像できないけども。

間違いなく、恋ばなしても話が脱線するパターンな



「じゃあ、時雨くんには大切な子はいないの?」



「…………………………るよ、」




「え?ごめん、何?」


あまりの声の小ささに、再度聞き返せば













今まで1度も見たことないくらいに頬を赤らめ、口元を手の甲で隠し、


時雨は他所を向いたまま呟いた。