ノラと呼ばれた男【弐】

私がもやもやしてる場合ではない、

私が大切だと思った人達の、大切な女の子。その子が傷付くのは嫌だし、

きっと皆が悲しむ。





(壽がこっちに現れない以上、その子を狙ってる可能性は高い)

でも、問題は……『その女の子』が誰か。が、私には分からないこと。

壽は、すでにその子が彼等にとって大切だと知っているのだろうか、

せめて名前だけでも分かれば、その女の子と接触できるんだけど…………、






と、一人頭を悩ませれば自然と寄っていたらしい眉間のシワ。

そんな中、ふと自分に影が落ち、前に立った人物が私の眉間を強く指で押す

普段なら人の気配で気づく私も、切羽詰まっていたせいか目の前に立たれた事すら認識できず、不意に触られた事で、



「うわっ!!!???え……?何?」

我に返り、見上げれば……………………

「んな顔してっとシワ増えんぞ」


「…………時雨、くん」




仁王立ちの時雨様。その顔はいつもの不機嫌そうな表情ではなく、どこか悪戯っぽさを含んだ笑みでニヤリと笑う

そんな意外な表情に呆気にとられ、思わずガン見していた私の頭を、ボールでも持つかの様にして握る。

あ。デジャブ。なんか前もやられたな

てゆーか、




「いたたたたっ、脳みそ潰れるっ」



「ふっ、潰してやろうか」



「いやいやいやいや結構です」


遠慮の「え」の字もなく握り潰そうとするから、本当に痛い。脳細胞が死ぬ!

ただでさえ、ちょっと残念な頭なんだから優しくしてよね!?←ぇ




「んで?」



「……………………は?」



主語も付けずに「んで?」とは何事か

思わず怪訝な顔をすれば、何故か時雨も怪訝な顔をする。いや、主語付けようぜ

「んで?」で通じる人間がいるのか、

居たとすれば長年寄り添った夫婦か、家族ぐらいだ。「それ」「あれ」で誰もが通じれば苦労はしないよ、この野郎



「チッ…………悩みごとか、って聞いてんだろ」




「いや、今、初めて聞いてきたよね」



然も、何故分からない!?と言いたげな時雨に言わせてほしい。

何で『んで?』で通じると思った!?

私、エスパーじゃないし。無理難題。




「…………察しろ」



「…………………………無茶ゆーな」