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「イチはさ、人見知りなの?」

と、不意に目の前の椅子に腰掛けていた藍が頬杖を付きながら聞いてくる。

どうやら自分が呆けている間に、昼のピーク時は過ぎた様で。少しだけ客が減っている。まぁ、相変わらず入れ替わり立ち替わりで女性客は来るが、




「…………うん、……多分。なんで?」



「ほら、それ付けてて外さないから」


指摘されたのは、竹松先生に貸してもらった仮面で。藍は片手で自身の目元を指差して、小首を傾げる

「前とか見える?」



「うん、見えるよ。なんか……これ落ち着くから」



「へへっ、俺の友達?みたいな奴等も赤と青のお面付けててさ、

んでもズルいよね。隠すの勿体ないくらいイケ顔なんだから!」







と、やや興奮気味に話す藍。

「イケメンは特だよねー」なんて、羨ましそうに話すから、思わず笑った。

小バカにする、とか。そんなんじゃなく

ただ純粋に微笑ましくて、



「何もー!俺はどうせ格好良くないですよーだ」


「嗚呼、違う違う」


慌てて訂正する自分を訝しげに見てくるあたり、感情が素直に顔に出るなぁ。と、思わず関心。


「僕は、格好いい、と思うよ」







あの時だって、『私』を庇ってくれた

正体すらまだ分かっていなかったセルピエンテを前に、私に『逃げて』と言ってくれた

その後、いつもなら話してくれない過去の話をしてくれた




藍を『藍』が教えてくれた。

何も『私』自身、語らない私に、藍は真っ直ぐに『守るから』って言ってくれたんだよ




私の事を何も聞かずに、『倉庫においで』って電話で言われた時、

どんだけ嬉しかったと思う?







それを『かっこいい』と言わずに何と言う?



「僕は、真っ直ぐな性格の君がかっこよく見えるよ」

眩しいくらいにキラキラしてて、
きっと周りにいる人も笑顔にしちゃう人

それが藍だと思った






なんて、『初対面』の僕が言う台詞ではないのに。気付けば口にしていた一言

気を悪くしたかな、なんて不安は直ぐ様消され、




「ほっ、ほんと!?ほんとのほんと!?





そんな事、初めて言われた!ヤバイね、照れる」