「あ、うん!全然いいよ!

寧ろ校内とか案内できなくてゴメンね?」




上目使いで謝ってくる藍は、いつも通り可愛くて。思わず口角が上がる

男姿の自分にも、同じ対応で。

本当、疑ってはいなかったが裏表がないなぁ。って改めて知る






「うんん、大丈夫!僕は平気だよ」



「良かったら、そこの席に座ってゆっくりしててねイチくん」



「腹減ったら適当に注文しろよ、奢ってやるよ、羽音がな」






皆に案内された席は、スタッフ全員が視野に入る位置で。丸い机に小さな椅子が置かれていた。

あ。ここなら皆を見守れるなぁ




なんて。そう思うのと、ほぼ同時に右腕を掴まれ、


驚きを隠せないまま、正面に立つ迅を見やった。掴まれた腕は朝と同様に右で、

どくん、と心臓が鳴る。











だが――――――――――――――――


掴んだ本人が、何故か一番驚愕していて

何度か唇を開閉させては、それの繰り返し。不審に思い、




「迅、くん…………?」


名を呼べば、弾かれたかの様に顔を上げ

まじまじと自分を見てくる。







え。私……何かやらかしたかな!?

なんて不安を抱く中、




迅は片手の甲で口元を隠し、数秒間目を逸らす







その後、









「………………いや、……なんでもない」




「?」





「何かあれば言えよ」



ぽつり、と呟き、背を向けて歩き出す

そんな迅の態度に私だけではなく、全員が「?」を浮かべる事となった



(…………………………迅?)