「いつか美依の全部もらうから」

「な、にそれ……っ」


「まあ、まだ美依にはわかんないだろうね」


知紘はわかっているのに、わたしはわかっていないのが気に入らない。


だけど、どうせ聞いても教えてくれないだろうな。


「泣くほど僕から離れたくなかった?」

「っ、そんなことない……もん」


改めて言われると恥ずかしくなってきた。勝手にひとりでいろいろ考えて、勘違いして、突っ走って、結局何もなかったって。


「嘘つき」

「ぅ……」


本音はホッとしてる。そして、さっきまでずっとモヤモヤしてたものが気づいたら無くなっていた。


「ほんと顔に出やすいね」

「意地悪……っ」


ぷくっと頬を膨らませて睨んでやった。