まるで、そんなことあったっけ?みたいな顔をしてる。
「あー、あれか」
どうやら思い出したみたい。
ほんの少し前のことなのにそんなすぐに忘れちゃうもの?
「なに、盗み聞きしてたの?」
「なっ、盗み聞きなんて人聞きの悪いこと……」
「ちょっとこっちおいで」
わたしがまだ話している途中だったのに無理やり腕を引かれて、人気の少ない路地裏に連れてこられた。
そして、そのまま身体を壁に押さえつけられて、後ろに逃げ場はなくなって目の前には知紘。
な、なんでこんなことになってる?
「美依はさ……」
「な、なに?」
いつもこれくらいの距離なんて何とも思わないのに、今はなぜかこの距離にドキドキしてる。
知紘の瞳が熱を持っていて、それがわたしの胸の音を加速させる。

