「……ほーら、しないの?」


ここでしないってはっきり言えないのは、自分が知紘からのキスを待ってるから。


なんてこと言えるわけなくて。


「ダーメ、すぐそーやって下向こうとする」

「は、恥ずかしい…もん」


もう心臓が持たない。

知紘の顔なんて小さい頃から何度も見てるのに


ドキドキ心臓がうるさい。


その心臓の音をかき消すように、タイミングがよくチャイムが鳴った。


「あー…残念。時間切れ」


スッとわたしから距離をとったので、ホッとしたと思ったら


「……隙あり」

「っ!?」


軽く触れてチュッとリップ音が鳴った。


「油断するからだよ」


意地悪そうに笑ったこの笑みには敵わない。