「だ、だって、知紘が……」
言いかけてやめた。
"だって、知紘がキスしたから"
なんて、意識しまくってるようなこと言えるわけない。
だけど、そんなの知紘が許すわけない。
「僕がなに?言いなよ」
後ろから抱きしめられていたのに、気づけば身体がくるっと回って、目の前に知紘が立っていた。
「ちょっ……まって、なんで服着てないの……っ」
今日に限って、目の前の知紘は上半身なにも身につけていない。
まさかこんな状態で抱きしめられてたなんて……。気付くべきなのに、まったく気づかなかった。
そんな知紘と正面で向かい合わせになるなんて、どこを見たらいいかわからなくて、あたふたして、知紘を押し返す。
だけど
「……もしかして意識してる?」
押し返すわたしの手を簡単に掴んで、そんなことを聞いてくる。