業務時間外の戯れ〜ハロウィンの甘い夜〜

「……そうでしたね」

と、タイムカードを押すと、すでに高梨さんは背後にいて、体を近づけるように同じくタイムカードを押した。

「高梨さんか。いいねえ、その謙遜な響き。いつものようにいってみろよ、高梨さんじゃないだろ」

「ま、学……」

ぐいっと手をつかみ、近くにあった作業台にわたしを押し倒す。

「まだオレのこと、慣れないのかよ。素直じゃない子にはあげられないなあ。欲しいでしょ、いってみてよ、あの言葉」

言わないと先に進めない空気が立ち込める。

「トリック、オア、トリート……」

「さあ、口、開けて」

しぶしぶ口を開く。

高梨さんの机の上に乗っていた黄色いカボチャの形をした瓶の中からひとつ、赤い包み紙を取り出した。

包み紙から一粒チョコがあらわれ、太く長い指でわたしの口の中にゆっくりと差し入れた。

これも会社で取り寄せた商品のひとつだ。

「ハッピーハロウィン」

にこっと笑うけれど、二重まぶたからのぞく瞳は笑っていなかった。

その先の高梨さんの仕草はわかっている。