「あんたが声をかけてきて、全てを思い出したよ」

 お爺さんは笑みを浮かべながら言う。

「そう、ある日を境にずっと待っておった。あの青年を」

 『不老不死』を与えてくれた青年を。

 静かにお爺さんの話に耳を傾けていた若者は、足元に伸びてきた人影に気づいて顔を上げた。

 話が終わるのを待っていたかのように、目前には若い一人の男が立っていた。

 いつの間にか人通りも消え、夜道を照らす街灯が周辺を照らしていた。

「・・・・・・お久し振りですね」

 笑顔で声をかけてきた彼にお爺さんは涙を流し始めた。

「じゃあ、この人があの・・・・・・」

 二十歳前くらいの色の白い青年。

 空気に溶け込んでしまいそうな雰囲気を持った不思議な人だった。

「もう、いいんですか?」

 青年の言葉に声を出さずに何度も頷いた老人。

 差し出された掌を躊躇なく重ねた。