「それで、どういうことか教えてくれねぇか?」





あの後組長室に案内された私の前には、お頭さんと若さんがいる





「たまたま通りがかった公園でクロにそっくりなやつを見かけたんだ。
声をかけたら本当にクロで……だけど、俺たちのことは何も覚えていねぇらしい。」





ここまでの経緯を話すと、お頭さんは少し悲しそうな顔をした





「……本当にごめんなさい。」





あなたたちのことを傷つけてしまって





「なぜクロが謝る。
仕方のねぇことだろう。」





お頭さんの言葉に泣きたくなった





「クロ、お前もしかして記憶喪失なんじゃねぇのか?」





私が……記憶喪失?



そう考えたところで今までを振り返ってみるけれど、特に抜けている部分はない



いや、抜けているということ自体を忘れているという可能性も……





「……分かりません。」



「そうか……。親父はどう思う?」



「ひとまずわしらのことと、
わしらが知っているクロのことを教えてやるのが最適解だろう。」



「うし、まずは俺。俺は神矢 航(カミヤ ワタル)。
神矢組若頭だ。」





航さんと呼ぶことにしよう



どちらかというと麓絽みたいなタイプかな





「わしは神矢 幹太(カミヤ カンタ)。
神矢組組長、このバカの親父でもある。
まぁ、組員共々仲良くしてやってくれや。」



「こちらこそ、よろしくお願いします。」





夏木だった時の私を知る人たち……



この人たちなら信じても大丈夫



かつての私がそうしたのなら、きっと……





「あなたがたが知ってる私のこと、教えてください。
私が知らない私を……。」





辺りには沈黙が流れ、いつ降り始めたかも分からない六月の雨が私の聴覚を刺激した





「なら、わしから話してやろう。」






夏木の頃の……私の物語