病院のすぐ近くにある公園のベンチに座る





「これからどうしようか……。」





慧と上とかいう人の関係



そして、その上の人に手術を止められてしまった雅ちゃん



雅ちゃんはいわゆる上の人にとって人質のようなもの



慧は雅ちゃんがあそこにいる限り下手に逆らえない



今回は慎重に動かないと



でないと雅ちゃんに危害を加えられる恐れがある



それだけは一番避けなければいけない









「…………ぃ。」








あそこは麓絽のいる病院



麓絽に助けを求める手もあるけれど、出来ればREDMOONに関係のない人を巻き込みたくはない








「…………ぉぃ。」








ていうか、上の人って……なんだろう








「…………おい。」








どうやって調べようか



表側からじゃ調べられない



なら裏側に踏み込むか……



でも、そうするとREDMOONに迷惑をかけるかもしれない








「なぁ、おい!!」








「うわぁっ!!」





急に耳元で大きな声がして驚いた



誰……?



声の主は知り合いではなかった



ツンツンした茶髪にスーツを着こなした、麓絽と同い年くらいの男の人



本当に……誰?



しかも、なぜか声をかけてきた向こうも驚いてるし











「お前…………クロ、なのか……?」








「……んで私の名前……、」





その人は、私の名前を聞くなり肩を掴んできた





「お前……ッ、今までどこにいたんだよ!!
頭や俺たちがどんだけ心配してたか……ッ!!」





頭……?俺たち……?



どれだけ思い出そうとしても、モヤがかかったように思い出せない



やっぱりこの人のことを私は知らない




「あの……人違いじゃないかと……。」



「んなわけねぇだろ!!
だってお前……







"夏木"クロだろ!?」





その名字に、頭が真っ白になった





「……ッ、なんで……なんであなたがその名字を……。」





夏木は父の姓"だった"



両親が交通事故で死んでしまい、シロ兄が失踪してからは、母の姓である八雲を名乗ってきた



夏木は……封印した



目的を果たし終わるまでは



あの日のように戻るまでは決して名乗らないと決めた



今じゃ夏木を知っているのは失踪したシロ兄と麓絽だけのはず





「なんでって……お前が俺たちにそう名乗ったじゃねぇか。」





私が……自分から……?



そんなこと……あるはずない





「その頭って人の所に連れていってくれませんか?」





私は、何かを忘れている?















「………………クロ?」





車に乗せてもらった時、誰かに名前を呼ばれた気がした