私は、慧が帰ってもなお病室の前にいた



慧の後ろ姿が頭から離れなかった……



決して踏み込んではいけない領域



慧の"壁"



いくら仲間だからといって、家庭事情に首を突っ込むのは間違っている



多分、私が逆の立場だったら拒絶するだろう



でも、どうしてもあの医師が言った言葉が引っかかって



"返事を待っている"という言葉と、それを聞いた時の慧の表情



拒絶されても、罵られてもいい



慧のあの表情を消せるのなら



私は踏み込むって決めたの



だから……ここで迷ってなんかいられない





「ごめんね、慧……。」





扉を開けた先には、一人の少女がいた





「こんにちは、雅ちゃん。」



「お姉ちゃんはだあれ?」





先ほど声しか聞けなかった少女



私の方を向いてコテンと首を傾げるその姿は、とても可愛らしかった





「私は……慧のお友達なの。」



「お兄ちゃんの?」



「えぇ。」





ベッドの横に置いてある椅子に腰掛ける





「雅ちゃんは何歳?
いつからココにいるの?」



「10才!!
んーとね、6才からここにいるの!!」



「雅ちゃんは何で入院してるの?」



「手術しなきゃなおらない病気なんだって!!
だから、学校にもいってなくて……。」