「八雲さん。
これ職員室まで一緒に運んでくれない?」





今年来たばかりの茜(アカネ)先生が泣きそうになりながら私を見る





「良いですよ。」





そう言ってノートの山を半分持った





「いつもごめんね。
委員長を雑用係みたいにしちゃって。」



「そういうのも含めて委員長なので大丈夫ですよ。
茜先生も来たばかりで大変なんですし。」





茜先生は瞳をウルウルさせ子供のように無邪気に笑った



北に位置するこの学校はREDMOONの属領であり、南に位置するのはBlue skyの属領だ



この街はどこにいても危険しかない



関わらないのが1番だが、この街に住んでいる限り嫌でも関わりを持ってしまう



しかも、私ー八雲クロ(ヤグモ クロ)はあろうことかREDMOONの幹部が揃うクラスの委員長となった



やりたくなかったけれど、茜先生に頼まれては断ることなんて出来なくて



ここは不良校で殆どがレディースや暴走族に加入している



髪は色それぞれ香水臭いわ化粧濃いわで、逆に私のような黒髪は全校に片手の数くらい





「茜先生、初めての職場によくこんな所選びましたね。」





私なら絶対お断りだ



言う事聞かない人だらけだしまず手に負えない





「んー……ここを紹介してくれた人がいて、母校だったらしいんだけど。」





でも想像してたより凄かった……と茜先生は苦笑した



こんな所を女性に紹介する人ってどんな人だろう



少し会ってみたい



ろくな人じゃないだろうけど





「八雲さんは?
八雲さんみたいな優等生ならどこにでも行けたんじゃない?」



「そんなことないですよ。」





普通に学校に来てるだけなのに優等生とか有り得ない



私は至って普通、周りが異常過ぎるだけ





「1番家から近かっただけです。
高校なんかどこに入ったって一緒ですよ。」



「そうなんだ。
でも八雲さんがいるお陰で私も先生として何とかやれてるから有難いわ。」



「そう言ってもらえて嬉しいです。
では私も帰りますね。」





職員室にノートを運び込むミッションは終わった



私もさっさと帰ろう








「あっ、八雲さん!!」








でも、今日ばかりは委員長という立場をとても恨んだ



それはもう本当に





「これ届けてもらえないかしら?」