「ここだよ。」
翔は言った通り大輝に説明してここまで連れてきてくれた
「大輝は鋭いからね。
俺はすぐ帰らなきゃいけないけど……本当に1人で大丈夫?」
「うん。ありがとう。」
本当はついていたいけど、と呟いた翔
もし本当にその人がシロ兄のことを知ってたら、いない方がいいと察してくれたんだと思う
「じゃあ気をつけてね。」
私は翔を見送り、お店の中を見る
普通のお店……みたい
繁華街にあるって聞いた時は危ないお店なのかと思ったけど、そうでもないみたい
意を決して扉を開ける
店内はレトロな雰囲気でお客さんはまばらだった
ゆったりと流れる音楽が店内と合っていて、ここだけ時間の流れがゆっくり流れているみたいだった
「いらっしゃいませ。
ここに来るのは初めてですか?」
「あ、はい。」
「でしたら、あなたに一番合うものをお出し致しましょう。」
バーテンダーの人の前の席に座る
なんていうか、優しい人だな
「ここに来たのは何か理由が?」
私の目の前にミルクティーを出してくれる
「……人を、探しに。」
「その人はあなたにとって大事な方なのですか?」
「……私の大切な人を知っているかもしれない人なんです。
その人しか、もう手がかりがないんです。」
これでも手がかりが見つからなかったら、私はどうしよう……
もうシロ兄を探すのをやめて、忘れて生きていくしかないのかな……


