「あれ?3番テーブルは?」
「お嬢さんは少し働きすぎだって。」
そう言って翔が見たのは、さっき私が出てきた4番テーブルの方で
翔が誰の言葉を代弁してるのかなんてすぐに分かった
そして、その言葉に含まれる優しさにも……
「そっか。」
「珍しいんだよね。」
「なにが?」
「大輝が他の人に執着するなんて。」
「き、気づいてたのっ!?」
さっきのことを思い出して顔に熱が集中する
「大輝の独占欲は強いからね。
こいつは俺のものだって自慢したいんだよ。」
「だ、だって……今日は私男装してるし、女の子の接客だし……。」
「お嬢さんは知らないだろうけど、クロハ目当てで来た男もたくさんいたんだよ?」
えっ!?
全然気づかなかった……
「こんなに可愛い顔してたら、男でもいいってなるんだろうね。」
「じゃあ、なんで……」
私は今日一度も男の子に声をかけられてない
「大輝がその男たち全部無理やりキャバクラの方に押し込んで、このお店で1番高いやつ食べさせて帰らせたよ。
だから今日の売上は相当だね。」
女子だけの接客でもすごい大変だったのに、それを私のために……
働きすぎ、なんて大輝の方だよ……
「この後、2人は休憩させてもらえるように頼んどいたから。
2人で回ってきたら?」
「え、でも……。」
「別にNo.1が2人いなくても相応の仕事はしたんだし、誰も文句は言わないよ。
あとは俺たちに任せて……いってらっしゃい。」
その言葉と同時にトンっと肩を押されて……
後ろから腕を引かれた
背中にとても大きくて、あったかい温もりがあって
「悪いな。」
大輝の声が頭上から聞こえた
そして引かれていく腕に、私はついていくしかなかった
「お嬢さん。」
呼ばれて振り返ると、口パクで"頑張って"と言われた
廊下は人でごった返していたけど、どんどん人の間をぬっていく


