ふんっ、知らないし



大輝の胸に顔を埋めて見られないようにする







「クロ。」







絶対返事なんかしてやらないし







「なぁクロ。」







……返事しないもん







「……クロ。」







〜〜っ/////







「もうっ、なに……んん……っ!?」







大輝の顔を見あげた瞬間に、私の唇に大輝の唇が重なった



急なことで頭が混乱して、また顔が赤くなる



そっと唇が離れた



それでも、私の熱は治まらなくて





「……好き、だよ。」



「あぁ。」





抱きしめられている腕に力が込められる



大輝の体温があったかい



すると、大輝はそっと私を離した





「クロ。
お前……何で神矢組のやつと話する時、無理に笑おうとするんだ?」



「何で……?」



「前に、若頭の車にお前が乗るのを見たことがある。
その次の日はどこか上の空だった。
それで、今日確信した。」



「……私は、あの人たちを見ると自分が嫌になるの。」





海に視線を向ける



どこまでも広がる海が、余計に私の空虚さを浮き立たせる





「私は、あの人たちと過ごした1年を覚えていないの。」



「記憶喪失か。」





私は無言で頷く





「あんなに……あったかい場所なのに。
あの中に囲まれて、あのあたたかさに触れていたはずなのに、私はそれを覚えてなくて。」





忘れるなんてありえない



忘れるなんて……許されないことだ





「どうして……どうしてよ……っ。
私の中には私の知らない何かがいて、いつかその何かに飲まれてしまいそうな気がする。」





じわじわと侵食されていって



そして、今の私は消えてなくなってしまうかもしれない





「そうしたら……私は一体誰なのかな?」





今の私を蝕むのは、とてつもない恐怖



忘れていることで、誰かを傷つけている





「それがお前の本音か?」





私の……本音?



……うん、そうかもしれない