「え、連れてってくれるの……?」
「うるせぇ。ついでだ。」
バイクに乗り、エンジンを吹かす
「ありがとう。」
バイクに跨り、発進する
私も大輝もずっと静かで、少し息が詰まった
私はこの背中に近づくことは……きっと出来ないんだろうな
背中に触れようと大輝の腰から手を離す
「……っ、バカじゃねぇのかっ!?」
「え?」
大輝は離れた私の手を力強く掴んで、自分の腰に引き戻した
掴まれた手に、心臓がばくばくする
「お前、死にてえのかっ!?
バイク飛ばしてんだぞ!!
手ぇ離すバカがどこにいんだよっ!!」
初めて大輝に怒られた
顔を見なくてもすごく怒ってるのが分かる
でも、手を離した私が悪い
機嫌悪かったのにもっと悪くしちゃった……
「ごめんなさい……。」
「チッ……。」
また私たちの間を静寂が包んで、気がつくと神矢組に着いていた
「よく来たな。クロ。」
入口にはもう航さんがいて
「チッ」
「お前、年上に舌打ちすんじゃねーよ。」
ごめんね、航さん
それ、完璧私のせいだから
「まぁ上がれよ。」
人生2回目のお邪魔しますだけど……嫌な予感がする
「「「こんちわっ!!!」」」
やっぱり……組員の方々がお出迎えしてくれた
「みなさん、こんにちは。お久しぶりです。」
「ホントだよ!いつ来てくれんのかと……。」
「元気そうで何よりでっせ!」
強面なのにニコニコしてて、前は怖かったけど何だか可愛い
「おう、よく来たな。」
「幹太さん。」
やっぱり……少しここにいただけでも、懐かしいと思ってしまう
記憶ないくせに図々しいな……
「REDMOONの長か。そんなに身構えるな。」
横にいる大輝の気配が少し柔らかくなった気がした
「……こいつとどんな関係、ですか。」
「クロはな、わしら神矢組の娘だ。」
「……な、」
大輝の視線を感じるけど、私もこの間知ったばかりだから何とも言えない
「たった1年だったが生活を共にした仲よ。」
幹太さんも航さんも、組員さんたちも
私を娘だと言ってくれて本当に嬉しい
「それで、今日は何用だ?」
「この間航さんたちに出てもらったお陰で、無事に解決することが出来ました。
今日はそのお礼を言いたくて……。
本当にありがとうございました。」
「神矢組がいなかったら、REDMOONは大切な仲間を失っていたかもしれない。
本当に感謝しています。」
私も大輝も玄関で頭を下げる
私たちだけじゃどうにも出来なかった
もっと酷いことになっていたかもしれない
誰かが死んでいたかもしれない
成功したから良かったものの、本当に危険な賭けだったんだ
「クロ、それにREDMOONの長よ。
顔を上げよ。」
幹太さんは微笑んでいた
「わしらも元は宮平組と同じだった。
いや……もっと酷い有様だったな。
だがな、それを正してくれたのは……お前たち兄妹だったのだぞ?
ならば、今度はわしらがクロのために動くのは当然のことだろう?」
幹太さんの優しい言葉に泣きそうになった
私は何も覚えてないのに
何もしていないのに
そう言ってもらえることが嬉しくて……切なくなった
「俺も親父と一緒だ。
家族みてぇなもんなんだから、これからもいつでも頼ってこい。」
本当に……ここの人たちに拾ってもらえて良かった
ヤクザだからって外見だけで判断しないでほしい
この世界には、こんなにも優しい人たちがいるんだから
私は……私たちは
知らず知らずのうちに色んな人に支えられている


