「俺は、お前にとって真白がどれだけ大事かも知ってる。
だから俺はお前を止めなかった。
お前が、お前の意思でREDMOONを抜けるってんならそれも止めはしねぇよ。」
麓絽の瞳は真剣だった
「ただ、これだけは覚えとけ。
例え誰が相手だろうと、俺はお前と真白の味方だ。」
その麓絽の優しさに涙が出そうになった
REDMOONに入って
神矢組と巡り会えて
それでもまだシロ兄の手がかりが1つもなくて
それどころか、私の記憶は所々消えていて
もしかしたら……私の中にいるシロ兄は、私が作った虚像で、本当はもう存在しないんじゃないかって
そう思ってしまう時がある
それでも、麓絽だけは私の背中を押してくれる
「麓絽……ありがとう。」
「それはいいが……あいつらには話さねえのか?」
「言うつもりはないよ……。」
「でも、仲間なんだろ?」
そうだよ……
みんなとっても大事な仲間だよ
でも、それでも……
「話すのが……怖いの。
仲間だからこそ、言えないことだって……あるでしょ……?」
それは、過去を乗り越えた凜や慧への裏切り
そんなの、私が1番分かってる
まだ……心の準備が出来てないの
私がそれを話す時はきっと……私がみんなの前から消える時だから
「ったく、1人で抱え込んでんじゃねぇよ。
少しは頼りにしろっつーの。」
麓絽
そんなに私を甘やかしたら、本当に私は麓絽に縋っちゃうよ
そんなことになったら、私は麓絽にシロ兄を重ねてしまう
それこそ麓絽に申し訳ないと思うから
「そうだね……。」
私は……自分で歩けるようになるだろうか
「ほら、今月の薬だ。」
「……先月より多くない?」
「お前が俺の忠告も聞かずに無茶するからだろうが。
自業自得だ。」
「あ、はは……」
やっぱり麓絽は怖い
だけど、その優しさが嬉しい
「じゃあ、そろそろ行くね。」
「五十嵐の妹、手術出来るようになったみたいだぞ。」
雅ちゃんが?
「良かった……。」
「あの兄妹はお前に助けられたんだな。」
「そんなことないよ。
あれは慧が過去を乗り越えた証だから。」
過去は人が前を向けるようにしてくれるものだと思う
だから忘れることも出来ない
病院を出ると、大輝がバイクに寄りかかっていた
「大輝……?」
今日は倉庫に顔を出さないって連絡はした
行き先を伝えた覚えはなかったんだけど……
それに、昨日のこともあるから少し距離を置いていた
「まだ本調子じゃねぇのに1人で出歩いてんじゃねえ。」
「……そう、だね……。
迷惑かけてごめんね。」
やっぱり……大輝にとって私は迷惑なのかな……
「……チッ、ほら。」
そう言って大輝はヘルメットを投げてきて
「神矢組んとこ行くんだろう?
さっさと行くぞ。」


