「もう調子は良くなったのか?」



「うん。
あの時のことは未だに思い出せないけど。」



「まぁ、そんくらいでいいだろ。」





麓絽って医者のくせに適当だよね



よくそれで医者になれたものだ





「今日は慧の件で挨拶回りに来たの。
麓絽がいてくれて良かった。
情報もくれて、倉庫も守ってくれて、本当にありがとう。」



「別にいいさ。
REDMOONは俺にとっても大切な場所だ。
後輩を守ることくらい朝飯前だ。」





そう言ってぐしゃぐしゃと私の頭を撫で回すのは、もうずっと小さい頃からだった気がする





「そういや宮平組だけどな、もう復旧不可能の壊滅状態らしいぞ。
お前の読みが当たって良かったな。」



「まぁほとんど隠しきれてなかったみたいだけどね。」





あの日私たちが乗り込んでいる間、麓絽には2つのことを頼んでおいた



1つは倉庫に来る敵の相手をしてもらうこと



もう1つは宮平組の不正を警察にリークしてもらうこと



麓絽は警察に知り合いがいるらしく、その情報をリークして宮平組を壊滅に導いてもらう手筈だった



そうじゃなきゃ、また慧や雅ちゃんの前に現れかねない





「本当にただの高校生とは思えねえな。」



「でしょ。」





でも……宮平組にいた人たちはどうなるんだろう



あそこが帰る場所だったのに



もしあれが私だったら……



REDMOONがなくなったら私は……





「……お前、何かあっただろ。」



「別に……何もないよ?」



「何年一緒にいると思ってんだ。
疑問じゃなくて確信してんだよ。
……藍羅か?」





やっぱり麓絽に隠し事は出来ないね……





「私は正しかったのかな……。
姫という立場を利用して好き勝手やってみんなを危険に晒してきて。
私は……みんなの重荷になってる気がして……。」



「それはあいつらに言われたのか?」



「ううん……直接は言われてないけど……。」



「クロはどうしたいんだ?
クロがここまであいつらのためにやってきたのは、あいつらが抱えるものから救ってやりたいと思ったからじゃねぇのか?」





私は……みんなを助けたいと思った



でも、私はどうしようもなく愚かだと知った





「私は……シロ兄を探すためにREDMOONを利用してる。
そんな私が、このままみんなの傍にいるわけにはいかないって思ったの。」





みんなを助けたいって言うのは、きっと私のエゴ



私は、みんなが過去を打ち明けてくれて、仲間だと思ってくれることがただ嬉しくて舞い上がっていただけかもしれないと