病院で目が覚めた時には全てが終わっていた
私の手を握って涙目で微笑む慧がいて
あぁ、助けられたんだと思った
記憶はほとんどないけれど、みんなが協力してくれたから慧を救うことが出来たんだと思う
そしてなぜか私はみんなに怒られた
凜や紫苑は泣きそうになりながら抱きついてきて、翔には怒られて、大輝と麓絽にはなぜか呆れられた
私は一体何したんだろう……
そして、今日……私は"五十嵐家"と書かれた墓石の前に立っていた
「堪忍な。
まだ……1人でくる勇気が出んくて。」
「ううん。私も来たかったから。」
お礼が言いたかったから
あの日、慧を助けてくれてありがとうございますって
「……一度も来れんくてごめんな。
勇気が出んかったけど……やっと向き合えるようになったから。」
墓石を眺める慧の表情は、どこか懐かしそうで
「あの時のこと、ずっと後悔しとった。
俺があんな風にならんかったらとか、母さんの言う事聞いてればとか。
でも……いつまでも後悔してたら前に進めん。
こんな俺でも、一緒にいたいって思ってくれる仲間が出来た。
俺も、一緒にいたいと思う。
だから……親父が守ってくれたこの命、絶対に無駄にはしいひん。
生きてる間には言えなかったけど……ありがとな。」
慧の手をそっと握る
大丈夫、慧は1人じゃないよ
REDMOONも、雅ちゃんも、私もいる
繋がれたこの手から伝わりますように
慧の頬を涙が伝った
それはきっと……前に進めた証
「……そろそろ行こか。」
「もういいの?」
「ちゃんとここに来れて伝えることも出来たから。」
「……け……い……?」
後ろから聞こえたその声に、慧は目を見開いた
私がゆっくりと振り向くと、そこには綺麗な女の人が立っていた
その人が誰なのか、私も……そして慧も気づいた
だからこそ慧は後ろを振り返れずにいる


