倖子ちゃんは、入ってきた人物を見て、なぜか、げ、と顔をしかめる。



気になって、私もドアに視線を移した。



「あそこ座ろうよ」


「うん、そうしよう」


「なんで俺が鞄もちなんだよ」



私たちと同じように小声で話しながら入ってきたのは、鈴葉ちゃんと、朝羽くんと、なぜか鞄を三つも持っている颯見くんだった。



また、胸の奥がトンと鳴る。



「勉強できるくせに居残り勉強かよ」



向かいに座る倖子ちゃんが小さく毒を吐いて、ノートに視線を戻す。



そっか。
倖子ちゃんは鈴葉ちゃんが苦手だから、あんな顔したんだ。



運が良かったのか、三人が座ったテーブルは、私と倖子ちゃんのいるテーブルとの間に本棚がそびえ立っていて、お互いがお互いの姿を確認することはできない。



「気にせず続けよ」



倖子ちゃんに言われて、私も、視線をテーブルの上の問題集とノートに戻した。