消極的に一直線。【完】

 ◆◇◆◇


 じんじんと冷える指先に、はぁっと息をかけると、白い息が丸く広がり消えていった。

 夏ならまだ明るいはずだった午後五時。冬の外は、もう暗くて、とても寒い。

 霜でうっすらと白みがかったコンクリートの上を、しゃりしゃりと音をたてて進んでいく。


 駅の近くのスーパーまであと少し。

 首に巻いたマフラーに顎を沈めて、少し歩幅を大きくした。


 目的のスーパーまで来て、ウイーンと自動ドアが開くと、温かい空気がぶわっと身体を包み込んだ。

 早足に中へ入って、お母さんから預かった夕飯の食材メモを、ポケットから取り出す。

 にんじんと、ネギと、鶏肉と、白菜。確認しながら籠を取り、一つずつ入れていく。


 この材料は、きっと、なべだなぁ。

 そんなことを考えながら、最後の白菜を籠に入れると、トンと肩に重みを感じた。


「雫!」


 真後ろから聞こえた、聞き覚えのある声。

 振り向くと、予想通りの人物が、内巻きの髪を揺らして、顔を覗き込んだ。


「まさかこんな所で会えると思わなかった! 住所もわかんないし番号も知らないし、連絡とれなくて悩んでたんだよねー」


 そう言って笑う倖子ちゃんに、少し気持ちが高揚する。


 冬休みに入ってから、三日間。
 誰にも会うことはなく、誰にも連絡をとることもなく、過ぎていった。

 
 それは、去年までの冬休みなら、当たり前のことで。

 クラスの人たちは、みんな誰かと遊んだりしているのかなぁ、なんて、羨ましく思ったりはしたけれど、寂しいと思うことはなかったのに。


 今年は違った。

 体育祭でのムカデ競争。打ち上げの焼肉屋。テスト前の図書室の勉強。


 楽しかったことがいっぱいあって、その時間を一緒に過ごした人がいて。

 それを思い出しては、会いたいなぁって寂しく思った。


 本当は、冬休みに入る前に、電話番号訊きたいなぁって思ったけれど、図々しいような気がして訊けなかった。

 だから、倖子ちゃんにこうやって会えて、その上、倖子ちゃんも、私に会いたいと思ってくれていたことが、すごく嬉しい。