消極的に一直線。【完】

 ◆◇◆◇


 放課後、約束通り、鞄を持って倖子ちゃんと図書室に来た。

 意外にそこで勉強している人は少なくて、私と倖子ちゃんは一番奥の一番目立たないテーブルを陣取る。
 

 背の高い本棚が盾になって、少し周りと隔離されたようなテーブル。

 そこに倖子ちゃんと向かい同士に座って、鞄から筆記用具と数学の問題集を取り出した。


「数学からやるの?」


 息の多い小声で訊かれて、遠慮がちに頷いた。


「数学が、一番、点数とれないから」


 同じように小声で囁くと、倖子ちゃんも数学の問題集を出した。


「じゃ、一緒に数学やろ」


「うん」


 こんな風に、友達と、少し真面目な雰囲気で、同じ問題を解く。

 ほとんど喋らないのに、家でひとり勉強しているときとは、全然違う。


「あ、雫、この問題わかった?」


「あ、うん」


「あたし全然わかんないんだけど。ちょっと教えてくんない?」


 そっか。こうやって、教え合ったりもできるんだ。

 友達って、楽しいことをするだけじゃなくて、こうやって真面目に助け合ったり、そういうこともできるんだ。


 本当に私の学校生活は、何もかもが変わった。颯見くんと会ってから、何もかも、変わった。

 憧れていたものを、少しずつ知って、すごく、楽しい。


「へー、そうやるんだ! ありがとう、雫」


 倖子ちゃんが小声で言って笑った直後、ガラガラと図書室のドアが開く音。

 倖子ちゃんが、私に向けていた顔を、そーっとドアの方に移した。