消極的に一直線。【完】

 競技は、いつの間にか三年生まで走り終わっていて、また、軽快な音楽が流れ、誘導されながら退場した。


 退場門と書かれた場所をくぐると、整列していた人だまりが、ぶわっと広がっていく。


「あたし、トイレで化粧直ししてくる」


 大西さんがそう言って、校舎の方に走って行くと、あたしも、と笹野さんと佐藤さんが追いかけていった。


「あー、あたしも化粧直ししなきゃ」


 横に歩いていた倖子ちゃんがそう言って、ちらっと私に顔を向ける。

 もしかしたら、私が一人になるのを気にしてくれているのかもしれない。

 そんな気がして、大丈夫と言おうと息を吸い込んだ――。


「哀咲!」


 だけど、その空気は音として吐き出されることはなく、呑み込まれてしまった。


 パタパタと後ろから近づいてくる足音。

 振り向くと、想像していた通りの人がそこにいて、またトンと胸の奥で音が鳴る。


「え? 何で? 颯見じゃん」


 倖子ちゃんが呟くのと同時ぐらいに、颯見くんが私の前で止まって、くしゃりと笑う。


「ムカデ競争、一位おめでとう!」
 

 春風が、引き始めていた汗を、爽やかにさらっていった。


 もしかして颯見くん、見ていてくれていたの?

 そう思うと、なんだか、胸の奥がむず痒いような感覚になる。