全校集会は、校長先生の体育祭青春話と、生徒会長の体育祭激励と、体育委員長の体育祭注意事項で幕を閉じた。



「では、全校集会を終わります。解散」



そう号令がかかると、しん、としていた体育館が急に賑やかになった。



その喧噪に混ざりながら、一人、体育館の出口へ向かう。



明日は体育祭。今まで一緒に頑張ってきたムカデ競争も、大縄も、全部明日で終わってしまうんだなぁ。



そう思うと、少し胸がキュッと詰まるような感覚になって、慌てて体育館の出口を抜けた。



留まっていた空気がサーッと流れていった。



「あ! 哀咲」



聞き覚えのある声で名前を呼ばれて、また、トンと胸の奥が音をたてた。



「友達待ってんだけどさ、なかなか出てこなくて」



ははっと笑ってそう言った颯見くんと、私の間に、春風が吹く。

本当は秋風なのかもしれないけど。



「久しぶりだよな」



クレープ屋で会ったとき以来だ、と笑う颯見くんに、あ、と声を漏らした。



ふと視界に入る、数メートル先の自動販売機。



今なら、ずっとできなかったお礼ができる。



「あ、あの……少し、ここで待ってて」



そう言って、校舎の壁際に並ぶ自動販売機まで走った。