消極的に一直線。【完】

 ◆◇◆◇


 翌日。体育祭本番で、運動場はいつもにも増して賑やか。


「雫、昨日は先帰ってごめん。教室にいないから先に帰ったんだと思って」


 一番最初の競技である百メートル走が運動場の中心で繰り広げられるなか、12組のテントの下で、倖子ちゃんにハチマキを結んでもらいながら、そう謝られる。

 謝らないで、という意味を込めて、首を横に振ると、動かさないで、と言われて頭を押さえられた。


「ほら、ハチマキはね、こうやってカチューシャみたいに結ぶの」


 前から思っていたけど、倖子ちゃんはとてもオシャレ。

 こうやって友達にハチマキを結んでもらったりするのも、すごく貴重な体験で、私はこの時間を大切にかみしめた。


「よし、できた。うん、かわいい」


 かわいいなんて言われ慣れていなくて、少し気恥ずかしい。もちろん、私のことじゃなくて、結んだハチマキのことだっていうのはわかっているけれど。

  
 お礼を言おうと振り返ると、倖子ちゃんが、あ、と声を漏らした。

 パタパタと賑やかな足音が駆けてくる。


「哀咲さん、寺泉、もうムカデ競争の整列だってー」


 そう言って二つに結んだ髪を揺らしながら走ってくる大西さん。その後ろに笹野さんと佐藤さんもいる。


「え、マジ? まぁ出番早いもんね。んじゃ、行こっか、雫」


「うん」


 答えると、倖子ちゃんは少し嬉しそうに微笑んだ。