カランカラン、と、またドアの音が耳に届く。



「雫、おまたせ」



倖子ちゃんの声が頭から降ってきて、無意識に止めていた息をふーっと吐いた。



顔を上げると、倖子ちゃんが、男子たちの間を堂々と割るように進んできて、ふっと笑った。



「あ、寺泉じゃん。あ、大西たちも来てたのか」



男子の中の一人がそう呟くのを無視して、倖子ちゃんはポンポンと私の肩を叩いた。



「雫、帰ろう」



そう言って、進んでいく。



「哀咲さん、楽しかったね!」


「明日も練習頑張ろう!」


「じゃあ、私たちはこっちだから。また明日!」



大西さん達も、一言ずつ私に声を掛けて、倖子ちゃんとは反対方向に歩いて行った。



胸の奥がポワンと温かい。



「雫、途中まで同じ道だから、一緒に行こう」



振り向いた倖子ちゃんに呼ばれて、私は小走りで倖子ちゃんの隣に並んだ。



「あたし駅から電車乗るから、交差点までは一緒じゃん?」



隣に、友達がいる。

誰かと並んで道を歩くなんて、めったにないことだから、すごく貴重な時間のように思える。



この一瞬一瞬が、すごくすごく大切な時間。



――仲良くなれたんだな



くしゃりと笑う颯見くんの顔がふっと浮かんで、また、トンと心臓が揺れた。



ちらりと、後ろを振り返ってみる。颯見くんは男子達と楽しそうに談笑していた。



颯見くんの言葉は、すごく不思議。


何度も思い出されて、なんだか、胸が、不思議な感覚になる。



「そういや雫って、部活とか入ってないんだっけ?」



倖子ちゃんの声でハッと隣を向く。



「あ……うん」


「そっかぁ。んじゃ普段の日は一緒に帰れないんだねー。あたしテニス部だから」



そっかぁ。

普段の日はみんな部活があるから一緒に帰ったりできないんだなぁ。


少しさみしく感じる。



「体育祭終わるまでと、テスト期間は、一緒に帰れるからよろしくね」



倖子ちゃんはポンっと私の頭に手を乗せて言った。



大きくうなずくと、倖子ちゃんはふっと笑った。