◆◇◆◇

 
 全校集会は、校長先生の体育祭青春話と、生徒会長の体育祭激励と、体育委員長の体育祭注意事項で幕を閉じた。


「では、全校集会を終わります。解散」


 そう号令がかかると、しん、としていた体育館が急に賑やかになった。

 その喧噪に混ざりながら、一人、体育館の出口へ向かう。


 明日は体育祭。今まで一緒に頑張ってきたムカデ競争も、大縄も、全部明日で終わってしまうんだなぁ。

 そう思うと、少し胸がキュッと詰まるような感覚になって、慌てて体育館の出口を抜けた。

 留まっていた空気がサーッと流れていった。


「あ! 哀咲」


 聞き覚えのある声で名前を呼ばれて、また、トンと胸の奥が音をたてた。


「友達待ってんだけどさ、なかなか出てこなくて」


 ははっと笑ってそう言った颯見くんと、私の間に、春風が吹く。本当は秋風なのかもしれないけど。


「久しぶりだよな」


 クレープ屋で会ったとき以来だ、と笑う颯見くんに、あ、と声を漏らした。

 ふと視界に入る、数メートル先の自動販売機。今なら、ずっとできなかったお礼ができる。


「あ、あの……少し、ここで待ってて」


 そう言って、校舎の壁際に並ぶ自動販売機まで走った。