少し、間が空いて、倖子ちゃんが鞄をポンと軽く私の頭に乗せた。


「雫、敬語はなしって言ってるじゃん。そういう仰々しいのやめてね。で、クレープは奢るから問題なし」


 さらさらと紡がれていく言葉を追って、え、と思わず声が出た。


 奢るなんて、そんなことしてもらっていいものなんだろうか。

 たとえ明日その分のお金を返すとしても、自分の分のクレープ代を出してもらうなんて、なんだか気後れしてしまう。


「あ、遠慮もだめだからね。明日お金返すとかいうのもだめ」


 私の思っていることを見抜いたかのように、倖子ちゃんが言い放った。

 それに続くように、大西さんが、その通り、と頷く。


「これは、哀咲さんと友達になれた歓迎でもあるんだから、奢らせてよね」


「一つ二百五十円で、しかも五十円引きだから、四人で割って一人五十円出す程度だし」


「お願い、哀咲さん!」


 大西さんに続いて、笹野さんも佐藤さんも、奢ると言う。

 
 それなら、明日、何かお返ししよう。

 そう心に決めて、小さくうなずいた。


「やった! じゃあ早く行こう!」


 張り切って教室を出た大西さんを追って、私も慌てて鞄を持って、倖子ちゃんたちと教室を出た。