もう何歩進んだかわからないぐらいまで行って、きゃーっと倒れていった。

 倒れてからしばらく、誰も動かない。


「……ねぇ、あたしら、すごい進んだよね」


 止まっていた空気が、笹野さんの声で一気に流れ始めた。


「うん。十歩なんてもんじゃないよ!」


「やった……あたしらすごくない?」


「マジこれならいけるじゃん!」


「ねーねー、みんなで帰りクレープ屋寄ろうよ」


「賛成!」


「哀咲さんも、行くよね?」


 ふと会話を向けられて、パッと声主の顔を見る。

 声主の大西さんも、他のみんなも、後ろを振り向いて私を見ていた。


「あ……えっと……」


 こんな状況は初めてで、思考がうまく働かない。


「雫行かないなら、あたしも行かないよ」


 倖子ちゃんが足の紐を解きながら言うと、あたしもー、と笹野さんと佐藤さんの声が重なった。


「あたしも、哀咲さんと行きたい!」


 これは、夢なのかな。私があんなに願ったから、夢を見ているのかな。

 うん、と頷くと、みんなが笑顔を返してくれた。


 すごいなぁ。私が夢見ていたことは、こんなにも嬉しいことだったんだ。

 妄想していたよりも、はるかに嬉しくて、もっともっと心が温かいものに包まれるような、そんな感じ。


「ってか大縄してたクラスメートもういないじゃん!」


「え! あいつらいつの間に帰ったの?」


「あたしら置いて先帰るなんて、クラスメートとしてありえなくない?」


「大西、あたしら何回も大縄より先に帰ってるじゃん……」


 他のクラスメートに置いてきぼりにされた私たちは、焦ることもなく、足の紐をほどいて、教室へと戻った。