消極的に一直線。【完】

 倖子ちゃんは、私のために、頑張ってくれている。

 大西さんは、下を向いて黙ったまま。
 

 このまま倖子ちゃんが言ってくれれば、昨日の問題は表面上解決するかもしれない。

 だけど、それじゃあ、私は大西さん達とはこれからもずっと仲良くなれない。


 ここで頑張らないといけないのは、私だ。

 ギュッと自分のスカートの布を握りしめた。脚が震える。空気が上手く吸い込めない。


 でも、今、伝えないといけないんだ。

 伝わるよ、と言った颯見くんの顔が、ふわっと浮かんできて、ぐっと全身に力を入れた。


「あのっ!!!」


 出てきたのは、絞り出したような裏返った声。

 それでも、私が声を出すことが珍しいからか、裏返ってしまったからなのか、下を向いていた大西さん達も、倖子ちゃんまでもが私に顔を向けた。


 みんな同じように目を見開いていて、倖子ちゃんでさえ驚いた顔をしている。

 一気に視線が集まって、また鼓動が速く鳴りはじめた。スカートを握りしめた手が震えているのがわかる。


 脚も立っていられないほどに震え出した。もう、声を絞り出すこともできないかもしれない。ドクドクと脈がどんどん速く鳴る。

 だけど、また、ふと颯見くんの言葉が頭に流れて、もう一度、足を踏ん張って、息を吸った。


「私っ……みんなと仲良くなりたいです……!」


 その声は、思っていたよりも大きく響いた。

 その言葉に反応することなく、立ち尽くしたままの大西さん達。


 大西さん達には、ムカつくとまで言われるぐらい嫌われていたから、きっと、倖子ちゃんのように良い反応が返ってくることはないかもしれない。


 まだ落ち着かない心臓の鼓動をおさえようと、スカートの布を握っていた手を離して、胸に当てた。