消極的に一直線。【完】

 クラスメートが一瞬私の方を向くけど、なぁんだ哀咲さんか、という具合にまた視線を戻していく。いつもと同じ。


 いつもなら少し落ち込みながら一番後ろの窓際の席に歩いていくけれど、今日はその前にちらりと倖子ちゃんの姿を探した。


「雫」


 後ろから、トンっと肩に手を置かれて、驚いて振り向いた。


「おはよ」


 もう片方の手で内巻きの髪を触りながら、倖子ちゃんが微笑む。

 夢じゃなかった。まだ半信半疑のような、不思議な気持ちのまま。


「お、おは、よ」


 鼓動がうるさい。でも、そのおかげで、これは現実なんだと実感させてくれる。


「そこに立ってたら入れないよ」


「あ……」


 慌てて教室の中に入ると、ははは、と倖子ちゃんが笑った。


「雫ってやっぱ天然なんだ」


 言いながら、席の方へと向かっていく。


「昼休みの練習、大西達にガツンと言わないとな」


 倖子ちゃんのそんな呟きが聞こえて、なんだか不安が拭い攫われていく気がした。


 その後しばらくして登校してきた大西さん達には、特に何か嫌事を言われることもなく――昼休みになった。