「颯見ぃー、俺もう歩けねー」


「うわっ、寄っ掛かんな重いだろー」




耳に入った声がハッと思考を止めて、爽やかな風が吹き抜けた。



反射的に目を向けると、男子に囲まれた颯見くんが楽しそうに笑ってる。



思わず、トクン、と心臓が音を鳴らした。



颯見くんと付き合えてから、もう二ヶ月が経つのに、私は片想いしてたときと全然変わらない。



遠くから、皆んなに囲まれる颯見くんを見つめて、鼓動を鳴らしてる。



そんなことを考えていたら、颯見くんの視線がスルリと周りの友達を抜けて、私に向いた。



「哀咲! 先に教室で待ってるから!」



くしゃっと笑う。



その瞬間に、春みたいな風が前髪を揺らして、滲んだ汗を拭い去っていった。



大きく頷くと、もう一度くしゃっと笑って、男子達と一緒に歩き出す颯見くん。



トクン、トクン、と鼓動が音を立ててうるさい。



好きだなぁって心臓が訴えてる。



「癒し系カップルだねぇ」

「ラブラブだぁー」



そんな声が聞こえて、急に恥ずかしくなって顔を俯けた。