消極的に一直線。【完】

「仲良くなりたい、ですっ……!」


 言った瞬間、脚が震えだした。心臓がこれでもかというぐらいドクドクと煩い。


「は……?」


 寺泉さんは、目を見開いたまま、固まっている。


「ああっ……あの……」


 本格的に身体が震えだして、立っていられるように、必死に足に力を入れた。過呼吸になったみたいに、息が苦しい。


 どう思ったかな。いきなりすぎて、あまり伝わらなかったかな。言い方悪かったかな。仲良くなりたいだなんて、厚かましかったかな。

 寺泉さんの反応を見るのが怖くて、顔を下に向けた。


 スタ、スタ、と、寺泉さんの近付いてくる音が耳に響く。

 通り過ぎて帰ってしまうのかもしれない。それとも、私に何か言おうとしてるのかもしれない。

 心臓の鼓動と上靴の音が、時を刻む時計のように混ざって響いて、気持ち悪い。