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「颯見ー、今日も哀咲さん待ってんの?」


「うん。行ってくる!」



部活後。



俺は、吉田の「熱いねぇ」なんて声を背中に受けながら、靴箱へ走った。



向かう先は、教材室。



急いで上靴に履き替えて、校舎内を走る。



早く、哀咲に会いたい。



夏休みでもパラパラと人通りのある階段を駆け上がって、一年の教室が並ぶ廊下を走る。



隣り合わせに並んでいた教室が途絶え、長い廊下の終わりが見えてくる。



並んだ教室から少し離れた一番奥に位置する教室――教材室が見えて、足の速度を落とした。




この中で、哀咲が俺を待っている。



たどり着いた教材室のドアの前で立ち止まって、息を整えた。



こめかみから頬へと伝う汗を、手に持っていたタオルで拭う。



ドアに手をかけると、少しだけ、緊張の糸が張った。