「ん? 何あれ」



だいぶ離れた場所。


ザワザワとそこだけ小声の声が渦巻いて、先生が集まっている。



「だから倒れたんだって。貧血とかじゃね?」


「貧血……」



倒れたらしい見知らぬ誰かが少し心配になってそこを見つめた。



群がる先生達の隙間からチラリと、騒ぎの中心人物がのぞく。



「えっ……」



息が、止まった。



雪のように白い肌。

長いおさげ髪。

力なく後ろの男子に委ねられた華奢な体。



何度も頭の中でかたどっていたあの子。



ずっと会いたかった。あの子の姿。



倒れた彼女を後ろから抱きとめている男子が、彼女の腹部に腕を回す。


その瞬間に俺は。



「っ、!」



湧き出た衝動に押し出されるように、そこへ走り出していた。