「……、え?」



まるで時間差みたいに真内くんの言葉が耳から神経を伝って脳にたどり着いた。



あ、れ?


嵐? どうして?



雫ちゃんは、真内くんのことが好きなんだよね?



雫ちゃんは真内くんにバレンタインのチョコ渡してた。


私は、ちゃんと見た。



真内くんこそ、何か勘違いしてるんじゃないの?



だって、それだったら雫ちゃんは――。



雫ちゃんと二人で話した時の、雫ちゃんの切なく苦しそうな顔。


見てる私の方が心臓を引きちぎられそうになるぐらい、切なくて、苦しくて、辛い、雫ちゃんの失恋した顔。


私は覚えてる。



「そんなわけは、ないはず。だって、」


「あの二人、何かがこじれてる」



そう言った真内くんは、どこか遠くの方を見つめている。



こじれてるってどういうこと?


それじゃあ真内くんは、雫ちゃんと嵐の仲をどうにかしようとして、あの場にいたの?



だけど、じゃあ。
バレンタインのあれは何だったんだろう。



「やっぱり私は、真内くんが勘違いしてるように思うけど」



そう言うと、真内くんは遠くを見ていた視線を私に向けた。



切れ長の、射抜くような目。



少し緊張が走る。



「あんたは、哀咲が、」



ポツリ、ポツリ、と低い声が落ちる。







「俺を好きなように見えるか?」







そう言った真内くんの目が、少しだけ切なく細められた気がして、ハッと息を呑んだ。