「私は、ずっと颯見くんが好きで、真内くんは、それを応援してくれていて、何も、特別な感情を持ったことは、ないよ」



言い切ると、肩が少しだけ降りて、今まで肩に力が入っていたことに気づいた。



だけどまだ浅い呼吸は、不安を渦巻かせている。



表情の見えない颯見くんの顔が、少しだけ下を向いた。



「そっか」



呟くように、納得するように、短く響いた柔らかい声。



その一声だけで、お腹の奥でうごめいていたものが、消えて無くなった。



「俺も、一つ、誤解解かせて」



そう言って、颯見くんが顔を上げる。



「鈴葉のこと、家族以上の気持ちで好きになったことないよ」



颯見くんの言葉に、ピクッと体が跳ねた。



私がずっと胸の奥に持っていた黒いものを見透かされたような気がして、急に恥ずかしさと罪悪感がのしかかる。



恥ずかしい。

すごく恥ずかしい。



たとえ事実は颯見くんが鈴葉ちゃんを好きでなかったのだとしても、私が、大切な友達である鈴葉ちゃんに、嫌な感情を向けていたことは、心苦しくて恥ずかしい。



颯見くんを真っ直ぐに見れなくなって、視線を砂浜に落とした。