消極的に一直線。【完】

 そんなことで泣いてたのかって驚かれちゃったかな。それとも呆れられちゃったかな。

 本当に、無駄な心配をかけてしまった。
 

 節度もなく泣いてしまって、こんな自分を見られるなんて。

 どうしよう。急に、なんだかすごく、恥ずかしい。


「あの、心配かけてごめんなさい」


 早く颯見くんの視界から外れたくて、体をくるりと百八十度方向転換した。


 恥ずかしい。すごく恥ずかしい。

 この場を離れようと左足を一歩前に踏み出した。


「俺、今すごく我慢してる」


 駈け出そうとした身体が、颯見くんの声で縫い付けられる。

 やっぱり、どうしてか、トクンと胸の奥が鳴る。


「大西ってやつ見つけ出して、俺が……」


 一瞬、何の事かわからなくて、方向転換した身体を戻して、颯見くんを見た。

 笑ってるかと思ったら、その顔はすごく真剣で、まっすぐで。なんだか苦しそうで。


「でもそれじゃあ、余計にこじらせるだけだよな」


 それに、と続く優しい声。


「どっちにしろ、怖がらせたくない」


 言っている意味は、半分わかったようでわからない。

 でも、私のために真剣に話を聞いてくれて、真剣に考えてくれたんだ。


「哀咲はどうしたい?」


 不意に訊かれて、思わず、え、と声が漏れた。