「なぁ颯見、さっき俺ら、哀咲さんに悪いことしたよな」



吉田がばつが悪そうな顔を向けて呟いた。



「悪いと思うなら、本人に謝れよ」



言うと、吉田は「そーだよな」と呟いて立ち上がった。



「俺、謝ってくる」


「え、」



「あ、俺も」

「俺も謝りに行く」



さっき哀咲をからかった男子が立ち上がって、吉田の後に続いて保健室を出て行く。



「あ、ちょっと!」



俺の方が哀咲と話したいのに。行けなくなったじゃねーかよ。



本人に謝れ、なんて言い出した数秒前の自分が憎い。



早く、哀咲と話がしたい。



まだ信じられない。



俺が前に告ったときは、あんなにショック受けたような顔で泣かれて。

あれから、一ヶ月ほどしか経ってねーのに。



本当に俺、好きって言われたんだよな?



早く。早く、確かめたい。



じゃねーと、全部幻だったって、夢だって、嘘だって、言われてしまいそうだ。





“あの子の瞳に俺を映したい”



数年前に抱いた望みなんかじゃ、もう足りねーんだよ。




花火合戦で、哀咲にもう一回告白しよう。



今度こそ、間違いなく俺の気持ちが届くように。



ずっとずっと、抱いていたこの気持ちを――。





(嵐side end)