消極的に一直線。【完】

 心にのしかかったおもりは、まだ重いはずなのに、それが感じられないぐらいに、ぽっと胸の奥が熱くなる。

 胸を締め付けていた何かが、じわっと音をたてるように緩んでいく。


「あの、私っ……」


 大西さん。笹野さん。佐藤さん。ムカデ競争。教室。誤解。喋れない自分。

 何から話せばいいのかわからない。

 でも、せき止められていた水のように言葉が溢れてきた。


「ムカデ競争が、上手くいかなくて……それは、私が原因みたいで……本当にそうかは、わからないけど、大西さん達はそう思ってて……」


 きっと私の言葉は人が理解するほどの文章になっていない。

 なのに、颯見くんは何も言わずに、聞いてくれてる。


「今日、それを指摘されて、練習できなくて……それで、教室っ……」


 そこまで言って、息が詰まったように声が出なくなった。

 止まっていた涙が溢れて、視界がぼやけてくる。


「あ、のっ……えっと……、」


「うん。ゆっくりでいい」


 その声が、すごく優しくて、また、詰まっていたものがほどけていく。


「……さっき……教室に、戻ろうとしたら……大西さん達が私のことっ……」


 教室で大西さん達が話していたことを言おうとして、止めた。


 そんなことを言ったら、大西さんたちがすごく悪い人みたいに思われてしまう。

 そうじゃない。あれは、大西さん達の本音。


 ムカつかれるような態度を取っていた私が悪い。喋らない私が悪い。

 それを私が勝手にショックを受けて泣いただけなんだ。


「あのっ……大西さん達は……私に対する本音を、言ってて……」


 少し引いてきた涙を手で拭った。


「その本音に、私が勝手に、ショックを受けて……泣いてしまって……ただ、それだけ、なんです」


 そこまで聞いて、颯見くんは、目を少し見開いた。


「あのっ、だから、私が勝手に、泣いてただけ、なんです」


 そう話し終わると、颯見くんは、じっと私を見た。