――俺がもらう



真内くんは、颯見くんを揺さぶろうとしてあんなこと言ってくれたんだ。



私がもう失恋してること、知らないから。



失恋してる、はずなのに。


また、期待しそうになってる。



だって、どうして、颯見くんは私の手を引いたの?



心臓がドキドキいってる。



いや、違うよ私。


颯見くんは、鈴葉ちゃんが真内くんのこと好きだと思ってるから。


真内くんに挑発的なこと言われて、苛立っただけ。



――哀咲を振り回すなよ



たぶん何かを誤解していて。


私を友人として、守ってくれようとしただけ。





「颯見ー! 顧問に怒られっぞ! 早く戻ってこいよー」


「わかった、悪い! 今行く!」



背後でそんなやり取りが聞こえて、颯見くんが走って行く足音が遠くなって行く。



振り向くと、颯見くんはもうサッカー部のコートに戻っていて、同じユニフォームを来た男子達に囲まれながら、楽しそうに話していた。





少しだけ、寂しく感じるのは、さっきまであまりに近い距離にいたせいかな。



傲慢になりかけた心を元に戻すのには時間がかかる。



好き、という気持ちを抑えることを忘れている。




――フラれるのわかってたけどちゃんと気持ち伝えてよかった



ふと思い出して。



私も好きと伝えてしまったらどうなるんだろう。



そんなことを、考えた。