ぎゅ、と背中に回された腕に力が込められて、強く抱きしめられる。



何のことを言ってるのか、私にはわからない。



だけど、密着した温度が優しくて、温かくて、胸がいっぱいになる。



なんだか心臓が苦しくなって、涙が出そうになった。



それをギリギリ押し込めると、強く締められた腕が、次第にゆっくりと力を弱めていって、静かに離れた。



「ごめん、力加減なしに……痛かったよね」



謝られて慌てて首を横に振ると、鈴葉ちゃんは少し微笑んでから、ふぅ、と息を吐いて視線を上げた。



「私、もうこんな風に思えるようになったんだなぁ」





透き通るような鈴葉ちゃんの小さな独り言が、晴れた空に溶けていく。



もう一度視線を私に戻した鈴葉ちゃんが、またふわっと花のように笑った。







「フラれるのわかってたけどちゃんと気持ち伝えてよかった」







鈴葉ちゃんの声は晴れやかで、いつもよりも澄んで聞こえた。



「早く雫ちゃんもそう思える日が来ますように」



そう言って目を閉じた鈴葉ちゃんの、上向きの長い睫毛が少し揺れる。



見とれていると、鈴葉ちゃんはゆっくり目を開けて、ニコッと笑った。




「寺泉さん待たせてるんだよね、行こっか」