「雫ちゃんは、その恋、まだ諦められないんだね」



静かに優しく鈴葉ちゃんの声が響いた。



握られた手から、温かい温度がじんわり伝わってくる。



「雫ちゃんにこんな顔させるなんて」



言われてハッと顔を俯けた。




私は、いったいどんな顔をしていたんだろう。



颯見くんの想い人の鈴葉ちゃんの前で。

想い人の鈴葉ちゃんに心配をかけて。



恥ずかしい。情けない。




俯いたままでいると、私の手を握っていた鈴葉ちゃんの手がそっと私の背中に回った。



驚いて顔を上げると、鈴葉ちゃんの体がふわっと密着して、そのまま抱きしめられた。



「あー……もう、」



切ない声が、耳をくすぐって、内臓がぎゅっと掴まれたように痛む。






「アイツに、雫ちゃんをかっさらって行ってほしい」





悲痛な叫びのような、声にならないような声が、耳元に響いた。





「早く、雫ちゃんの心を奪ってあげてよ」