消極的に一直線。【完】

 私のこと、だ――。

 ドクドクと脈の音が嫌に大きく響く。


「やっぱ何も言わないし」


 そう言い捨てて、大西さんは校舎の方へ帰っていく。
 笹野さんと佐藤さんも、その後について行ってしまった。


 さっきの大西さんの視線が、頭から離れない。身体が、震える。脈がうるさくて、何も考えられない。

 しばらくして、寺泉さんが、めんどくさ、とため息をついて行ってしまった。


 
 まだ、運動場は賑やかで、大縄の練習をする声は、嫌なほど楽しそうに聞こえてくる。

 一年十二組のクラスメートが視界の端に入ると、ちょっと男子がんばってよー、なんて笑いながら、大縄を練習してる姿が見えた。

 
 誰も、ムカデ競争の、こんな重い空気に気付く人なんていない。
 

 何も、わからない。

 嫌な脈の音と、大縄の賑やかな声だけが頭に響いて、どうしたらいいのかわからない。

 わからないまま、やっと動くようになった重い足を校舎の方に進めた。